初日の出

 2012年辰年の初日の出は、関東地方の多くではあいにく薄雲にさえぎられ、雲の上からのものになってしまった。東京近郊では、高尾山や犬吠埼、そして、東京タワーなどの“名所”に毎年多くの人たちが繰り出す。2013年からは高尾山よりも高くて海にも近い東京スカイツリーがおそらく随一の初日の出スポットとして脚光を浴びることになるであろう。

 

 私も社会人になってしばらくの間、初日の出登山に思い入れ、凛とした気持ちで新しい年の夜明けを迎えていた。寒さ厳しいなか、まだ黒い山陰(やまかげ)のかなたの海が太陽に照らされてにわかにオレンジ色に輝く瞬間はいまも鮮やかに脳裏に残っている。

 

 なぜ初日の出に多くの人が出向くのだろうか。欧米人には初日の出に特別な感情はないと聞く。だとすると、日本人には、“自然とともに生きる”とか“自然から糧をもらう”とかの特別な感情が先祖から脈々と受け継がれているからと言うことができるのではないだろうか。それは富士山への思いや俳句の心にも共通する。山では日の出を“ご来光”と呼ぶ。そこには、単なる自然現象を超えた、太陽を畏れ敬い感謝する心が感じられる。ビジネスの世界では国際化が叫ばれているが、この特別な日本の心をいつまでも大切にしたいと思う。

 

文責:佐藤泰久・tnc会員(2012.1.15)