5年を超えてパートで働けば正社員??

平成25年4月1日から労働契約法の一部が改正されました。改正のポイントは次の3つです。

 

無期労働契約への転換 有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた労働者が無期労働契約への転換を申込んだときは、使用者は承諾したものとみなす(拒否できない)

雇止めの法理の法制化 有期労働契約であっても、反復更新によって期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態に至った労働契約は、単に期間が満了したというだけでは雇止めできない。

不合理な労働条件の禁止 有期労働契約者であるという理由だけで無期労働契約者と労働条件について不合理な相違があってはならない。

 

 有期労働契約とは文字通り期間の定めのある労働契約で、有期労働契約で働いている人はパート、アルバイト、契約社員、嘱託、派遣事業所の派遣社員などです。総務省の労働調査(25年4月~6月))によりますと、役員を除く雇用者数5,198万人、このうち有期労働者は1,881万人で36.7%を占め、この割合は年々増加しています。4割弱の労働者がいつ仕事を失うかわからず、将来の人生設計も建てられない状態で働いている現状は大問題です。有期労働者の雇止めに対する不安を解消し、働く人が安心して働き続けることができるようにするため改正されたものですが、使用者にとっても働く人にとっても問題がなくなる訳ではありません。

 

 ルールの内容を簡単に説明しますと 平成25年4月1日以降契約する有期労働契約から通算のカウントが始まりますので、実際に無期労働契約に転換するのは早くても平成30年4月からとなります。 例えば1年の有期労働契約を結びその後4回更新すると5年になります。5回目の更新をすると労働者は無期転換の申込みができ、使用者は承諾したものとみなされ、6回目の契約のときから無期労働契約となります。5回目の更新をせず、6カ月以上の空白期間があると、それ以前の契約期間は通算しません。(クーリング) 通算した契約期間が10ヵ月に満たない時はクーリング期間も短縮されます。 無期労働契約になっても、特段の理由がなければ定年まで働き続けることができるということで、職務、賃金、労働時間等の労働条件については有期労働契約のときのままです。 賞与、退職金、休職制度などの労働条件は正社員と同じになる訳ではありませんが、社内ルールをきちんと見直しておかないと将来トラブルが発生する可能性もあります。

 

 無期労働契約になっては困るということで、最初から契約更新は5年間だけと決めてしまったり、無期転換の申込みをしないことを条件に契約を結んでおいたり、クーリング制度を意図的に活用したりと対応に追われている会社もあるようです。

 

 しかし、いつ雇止めされるかわからない不安定な状態で、早く勤務時間が終わらないかと考えて働くのと、仕事にやりがいを持って創意工夫しながら働くのとではどれだけの違いが出るでしょうか。 有期労働者を無期労働者にするだけでなく、正社員にする制度を社内で作り、対象者が出れば支給される助成金があります。また、有期労働者と正社員の評価、待遇を同じものにしたり(時給換算で差が5%未満)、短時間の有期労働者に健康診断を実施したり、共通の教育制度を導入した場合等の助成金もあります。この機会に本気で有期労働者の活用を考えては如何でしょうか。

 

(木村幸子)